僕の妹は小学生の頃から人付き合いが下手で、友達と一緒に遊んでいる姿を見掛けた事が殆どありませんでした。
お世辞にも明るい性格とは言えず、見るからに影を背負っている雰囲気だというのが分かるのですが、そんなキャラクターだからなのか、いじめっ子すら寄り付かず、完全に孤立していました。
中学に入ってからは、無理して人と接しようと、声を高くして喋っていた様なのですが、誰とも話が噛み合わず、却ってその向上心が仇となっていたみたいです。
妹は人付き合いをする事に諦めを覚えたのか、中学卒業後の進学先は通信制高校でした。
通信制高校であれば自宅学習が中心になるし、元から私用で出掛ける事もありませんでしたから、妹からすればベストな選択だったのでしょう。
そして僕はと言うと、思春期になる頃には妹の存在が鬱陶しく感じる様になって、必要以上に妹に対して怒鳴る様になっていました。
自分が大人になった今だと、妹は妹で必死にもがいていたのだと分かるのですが、当時は妹の事でからかわれる事が嫌で仕方なかった事もあって、保身の事しか考えられませんでした。
妹は、そういう時だけ感情を露わにして泣き出すのですが、それも同情を買うどころか、却って苛立ちすら覚えました。
通信制高校に入ってから、妹は、一応真面目に勉強をしていました。
元々成績は優秀な方だったので、地元の進学校に行かない事が非常に勿体無いと、妹の中学時代の担任も言っていたのですが、妹が普通の高校に進学しても、どうせ辞めるのが関の山だと僕は考えていました。
僕個人としては通信制高校に通っているのなら、カウンセリングくらいは受けて欲しいと思っていたけれど、本人があまりその気じゃないみたいで、とりあえず人と会わずに勉強出来ればいいという考えだったみたいです。
当然そんな考えでは社会に通用しませんから、お前は卒業したらどうするつもりだ?と、強く問い質しました。
妹にも具体的な未来のビジョンは無かったみたいで、このままじゃ通信制高校に通っても意味が無いかもしれないと思い、僕は改めてカウンセリングや進路相談を受ける様促しました。
この期に及んで納得がいかない様子でしたが、流石に僕が必死に説得していたのを見るに見兼ねてか、母が妹と一緒に登校する形で、諸々の相談を何度か受ける事になりました。
一応それで今後の方向性が定まってきた様で、とりあえず妹は学校に登校するペースを上げて、他の生徒達との交流を積極的に図る様に指導されました。
中学時代にそれで失敗しているので、ネックではあったのですが、一応カウンセリングを受けてからの交流ですし、しかも妹みたいに人付き合いの上手くない子はザラにいたので、それもあってか妹も気負いしなかった様で、ようやく人付き合いで成功出来た様でした。
通信制高校卒業後は、大学も通信制にしようかと妹は検討していたみたいですが、結局は短大に進学して、今は卒業し、OLとして勤めています。
実際上手くやっているかどうかは分かりませんが、粘り強く働いていると思います。