私には二人の姉がいて、どちらも凄く成績優秀なんですが、かたや私の成績はイマイチで、特に数学だけは本当に苦手でした。
私が高校生の頃、私の学科の数学を担当していた教師がいたんですが、今まで数学の先生を嫌いになった事は無かったんですけど、その人だけは生理的に駄目で、ちょっと先生としておかしいと言うか、生徒に対して贔屓したり、かと思えば差別したりもするし、態度の差が露骨すぎて嫌悪感を持っていたら、私まで先生に冷たい態度を取られる様になってしまって、段々数学の授業を受けるのがしんどくなってきて、数学のある日は休む様になってしまい、学校へ通う事に何か意味があるのかと思う様になって、中退しちゃったんです。
逃げたみたいでシャクだけど、あの教師の授業を受けるだけでまともな精神状態じゃいられなくなっていたし、他の先生に呼び掛けても解決する事が無かったんで、私の心も持たないだろうと思ったんです。
とりあえず高校中退して姉たちには厳しく言われましたが、母は私の精神面が人一倍デリケートだって事も分かってたし、あまり強くは言いませんでした。
「通信制とか行く気が無いんなら働きなよ」と姉たちは私に釘を刺したんですが、生まれて初めて働くんですから、自分の中では高い壁を感じました。
もうちょっと間を置いて欲しいなーとも思ったんですけど、それだと姉たちが掛けるプレッシャーに押し潰されそうになります。
私は中退してから時を待たずして、早速就職先を見付ける事にしました。
しかし、高校を卒業してるかしてないかの違いが、ここまで大きいとはと思い知らされてしまいました。
就活中に姉たちから急かされて精神的に参っていたのを母が見越してか、父の実家に行って暫く住む事になり、当分姉たちとは会わない様にされました。
姉たちは母から私に電話しない様に忠告され、当分姉たちから電話が掛かってくる事も無かったんですが、その間父方の祖父母と生活して、二人の生活のサポートをしていました。
どちらも要介護という状態では無かったんで、私が出来る事は大して無かったんですが、力仕事とかは流石にお年寄りには大変なので、そういった事を中心にやっていました。
祖父母からは感謝されましたが、そんなに大したことをやっている訳では無かったし、感謝される身分じゃないなぁって思っていたんですが、精神的には自分の家にいる時よりかは、随分楽でした。
そんな生活を送ってる中、バイトですけど、何とか祖父母の家の近所のコンビニで勤められる様にもなりました。
そしてとうとう18を過ぎた頃、祖父母が衝撃的な事を言ってきたんです。
それは私にお見合いをしろとの事でした。
まだ10代だし、恋人が出来た事も無いのに、いきなりお見合いは出来ないって強く反対したんですけど、姉たちが20代半ばを過ぎても結婚しないのを心配し、せめて私だけでもしてくれないかとっていう話でした。
始めは抵抗こそしましたが、かと言ってこの生活をこのまま続ける訳にもいきませんし、全然乗り気じゃなかったんですが、渋々お見合いを引き受ける事にしました。
お見合い相手がやっぱり気になるところなんですが、どうせおじさんなんだろうなーと思ったら、20代後半くらいの好青年で、想像していたのと全く違いました。
こんな歳の男性が何でお見合いなんかしたんだろうって気になったんですが、どうやら一人っ子らしくて、家業を継がなくちゃいけないらしく、出来るだけ早くサポートしてくれるお嫁さんが欲しいという事でした。
家業というのが日本酒作りで、どうやら明治から続く歴史のある家だという事が分かりました。
私なんかでサポートが務まるのかなぁと思ったんですけど、思った以上に日本酒の世界って奥深くて、聞いていく内にどんどんのめり込んでしまいました。
当時私は未成年ですから、飲む事は出来ないんですけど、色々話していく内に気が合って、彼と結婚する事になりました。
成人した今では、日本酒を飲む事が当たり前になっていて、子供を身籠っている時は飲めないのがちょっとツラくなったりしています。